台風の予感

ぞわぞわざわざわふわふわ。。。

台風が近くに来るかも、、となると。

家の中は、ざわざわ、と。常になく家の周りをうろうろとしたり、ご飯をたいたり。外では、空が風が木が草がぞわぞわ、と。

風になぶられながら見る、一瞬で模様を変える風景に魅せられたのは、子どものころ。あのころの子どもは、まだ私の中にいる。

ニュースをみながら、ふわふわ浮き立つ。オトナをまねて、ざわざわと家の周囲を中を整えつつ。ぞわぞわの気配に、手は止まる。

遠くの、近くの、空は。晴れた空と、嵐の予兆と。写しかえて、入れ替える。ほんの少し目を離すと、別の空へ連れていかれる。

唐突に速度を変える走る風に、あらがうように、沿うように。木も草も水も鳥も虫も、そこにあるすべてが、とどまりながらも流される。

いつもとは違う、トクベツがやってくる予感。

とてもとても不謹慎だとはわかっているけれども。遠足とか運動会とかお祭りとかの前日の高揚感に、よく似た感情がふわふわと。

灯る。

たぶん、私にとって。台風襲来は、神の訪い。

つまり。海の向こうからやってくる神を迎えるために。ざわざわぞわぞわふわふわ、ざわざわぞわぞわふわふわ、と。世界が祭祀を準備する、その様を覗きみて。

惹き込まれる。

あとはただ、息をひそめ。

すべてを連れてきて、すべてを連れ去っていくのを。自分の何かをも、連れ去っていくかもしれない、力を。ただただ頭を垂れて。

待つ。

そうして。連れてこられる、連れ去られる、何もかもに。

祈る。ただ、祈る。ただただ、祈る。