総武線はデラックス

 

昼下がりの総武線。それほど混んでいない車内はゆったりと座れて、ここから小1時移動か、、なんてゆっくり本をひら、、こうとして。

うるさい。

斜め前の女性二人連れ。両方ともおそらくは40代。大声で語りを聞かせているのは、そこそこのわがままボディなマダム。チアリーディングもできそうなテニスウエア。組んだ足はスニーカー。太ももはかなりの迫力で、二の腕とともにその存在感を競っている。安室チャン風の髪型に、焼けた肌、アイメイクはかなり強め。そして、身体に負けない声のボリューム。仮称、安室デラックス。まあまあの音量で相槌を打ちつつ、いい感じに安室デラックスを転がしているのは、バブルで小麦色の浅野温子風メイクと服装。仮称、温子デラックス。化粧の濃さか肌の色か、ともかく見た目ではわからないけれども、おそらくはかなり酔っているにちがいない。ハリのある声で繰り出される愚痴もその合いの手も、酔っ払い特有の節回しで何度もループを繰り返す。

この二人連れ、個人的見解としては、ふたりとも自分の年齢と時代の見積もりを20年くらい間違っている。いうなれば夜更かしでデラックスさんに遊んでもらえそうな、そんな二人。。少なくとも手持ちの本よりもよほどユニークで得難い二人連れ、、と思っているのはたぶん私だけでなく。隣に座る若いお兄さんは、スマホを持ってはいるけれども、その指は動いておらず、目線はスマホにはない。またちょっと離れたところに座るお姉さんも同様で。さらにちょっと年配のご夫婦は、ふたりとも顔は前で目線がちらちら二人連れをとらえている。新しい乗客の中には、声の音量にぎょっとしたように二人連れを見た後、イヤホンを耳に入れ、、しかし次の駅に着く前には、イヤホンをしまっていた。

二人連れの会話を追っかけつつ、車内観察にいそしみつつ、総武線に揺られる。ちょっとしたお芝居の、舞台の上の観客席。。役者にはなりたくはないけれども、せいぜいに主役(二人連れ)の邪魔にならないように、おとなしくそろそろと鑑賞。このへんの駅で降りるのかなあ(偏見込み)から二つくらい外れた駅で、安室デラックスは号泣し、安室デラックス(小)が「わかる、そういうとこあるよね」と繰り返しながら肩を抱いて降りて行った。

総武線は、クセが強い。