手に負えないかもしれない課題が湧いて出たときに、人は「とりあえず」を発動する。
問題の先送り。日々のニュースが教えてくれる。世界は、先送りに、あふれてる。つまり、私も世界の一員で。
突然の、大量の、ミニトマト。
かなり重い段ボール箱を受け取った時のわくわく。送り主を確認してのどきどき。ぎっしりつまったミニトマトへのふるふるとした歓喜。どの瞬間の想いにも、くもりはない。まったく透きとおる、なんならきらめく、トマトへの恋情。
しかしながら、どれほどの恋心にも、影はさす。すべてのきらめく瞬間を、身体に記憶に、とどめることがきるのか。
・・・なんて精一杯に気取ってみても、目の前の段ボールぎっしりミニトマト推定10キロはそこにいる。
うれしい、たのしい、どうしよう。
身体にあふれるメロディに振り回されながら見つめる、ぱつんぱつんのミニトマト、みにとまと。とまとととまとととまとと…。
そっうと、ふたを閉じて。そうして、そっと瞳もとじる。
とりあえず、見なかったことに…
って、先送りに現実逃避を足している場合では、ない、な…。
瞳を開けて、ふたをもう一度あける。やっぱり、そこに、みんないる。
口からとびだすどっこいしょ。とまとととまとと。手触りを確認しながら、どんどん分けていく。割れてるやつ、柔らかいやつ、それ以外。手が動き出すと、時間が走り出す。あっという間に、はい、終了。
割れてるやつ、柔らかいやつは台所へ。これくらいなら、何とかなる、はず。
しかしながらの、それ以外。それ以外、、、は。知り合いにシェア、にも限度があり。冷凍庫は、そこそこ満たされている。保存食にする、のは、、、自分か、、、、。
私の世界に。恋しいトマトが、そうして先送りが、あふれ出した。
とりあえず。
いっこ口に放り込む。酸っぱさと、甘さと、青さがはじける。さくさくさくさくと消えていく。もういっこ。今度は甘さが先に、はじけとぶ。さらにもういっこ。次は、、
恋のこころは、止まらない。トマトを感じる、瞳はとじて。
今の私の10分の1は、たぶんトマトに食われてる。