夏のハムレット

家にいると、ゆだりそう、な。ためらわずにエアコンを利用したいのは山々ですが、MOTTAINAIにやや憑りつかれているようで、これもまた、おひとりの弊害。だれかいれば、そのだれかを言い訳にしちゃうのですが。わたくしごときに、エアコン、使ってもいいんでしょうか、地球。いやもっと現状に即して、お財布。

天気予報を見ているとどうにも時代を感じる。まだ夏休みを楽しめたころ、お盆までは川かダムであそび、お盆が終わっても最高気温が30度になるような日は、図書館に駆け込んだ。エアコンなんて家にあるもんじゃあ、なかった。扇風機で精一杯、誰かんちがエアコンをつけたってのが話題になるような時代に子どもだったのだ(たぶん地域差はかなりある)。

今は、エアコンがないと命に係わるかもしれない。窓を開けて目いっぱい風通しても、朝起きてみる台所の温度計は32度を超えている。昼間なら軽く体温を超えてくるだろう。もはや、エアコンをつけて過ごすというのは、台風が直撃するといわれれば避難を考えるのと同じ、津波が来るなら高台に逃げるのと同じ、命を守るための行動である、と言えるのに。育ちが育ちで、どうにも自分のためだけにエアコンをつけた部屋ってのは、落ち着きやしない。ひょっとしたら熱中症で倒れるおじいさまおばあさま方も、こんな気持ちか・・

日本の夏は暑いのだ。打ち水をし、風鈴をつるし、涼を演出するほどに。庇や縁側で夏の直射日光を避け、風が通り抜けるように柱と梁で支え、湿気をためないように床下までも通気性を保つほどに。つまるところ、それほどまでに、暑かったんだ、むかしから。

そんな工夫に工夫をのせてきた日本家屋ですら、今の夏をエアコンなしで乗り切ることは、命に係わるのではなかろうか。もちろんその家のある地域にもよるけれど。そもそもある程度の町であれば、家の窓をすべて開け放して過ごす、というのは、別種の危険とも向き合わないといけない気もする。いやまて、江戸だって、なかなかの過密都市。そっちの危険はどうだったんだ、って、まあ、そんなのどうだっていいや、さ。江戸がどうであろうが、今うちが涼しくなったりしないんだから。

夏のお休み、まだ10時にならないというのに。順調にカウントアップを続けている温度計をにらみつける。吹き出す汗と沸きだす脳みそ。扇風機を抱えて、苦悩する。

エアコンか、外出か、それが問題だ。