気になる、女(ひと)

久々の遠足、古代メキシコ展で凍えたあの日から早1週間。赤の女王の棺のあたりは、もうほとんど早足で、外の暖かさだけを求めていたもんだから。また来るとだけ言い置いて、いつとの約束もできやしない。

誠実さを置き忘れた、モテ種、なら許されるかもしれないけれど、誠実でありたいとは夢想する喰い倒れ種ですから。ふられてしまうかもしれない。。

ひとり上手な約束も、果たす気概はあるのだ。とはいえ、なかなかに見通しが立たなくて。手足ばたばたで足搔いている。これでだめならひっくり返って泣いてみる予定。とにもかくにも、気になる、のだ。

というのも。

ぼんやりとタマシイが抜け出していきそうなときに。死の眠りについてなお、さらされるひと、赤の女王が、脳裏に染み出す。

彼女はすでにその生を終えていた。が、しかし。時を遠く隔てた現代に、彼女は、その生を継続させられているかのようだった。

心臓が鼓動を止め、生物として生の終わりを迎えた彼女の時間。丁重に飾り立てられて、埋葬された、その瞬間に。コインはひっくり返り、生き続けることになったのかもしれない。

死ぬということは、生きることを止めること。

死ぬこと、を奪われた彼女と、もう一度の間を持つそのときに。どんな語りを受けるのだろう。

あきらめにあきらめを重ねて。生きていて死んでいる、そんな時間をつないでいくことが、わたしには、ある。

赤の女王は、嗤うだろうか。

死、と、死ぬ、ということは別のモノ。

そうして。

生、と、生きる、ということは、別のモノ、と。

死を迎えてなお、死ぬことを許されない。そこにあるのは、なにものなのか。

何もかもにこたえてくれるおそろしい女、とは思わないけれども。絶望的に赤を纏う、気になる、女。もう一度を、ぞくりと待つ、女(ひと)。