八百屋と奇跡とどっさりと

あの八百屋は営業しているか、、線路の向こう側に目を凝らす。

私が住む町の駅の向こう側の八百屋の存在は、10年ほど前から知っていた。おじいさんとときどき娘さん?がいる、昔ながらのこじんまりとしたとっても普通の八百屋さん。大きなスーパーに行く道途中にあるので、たまにお買い物させてもらうことがある、そんなお付き合いだった。

4年ほど前に店が改装され、代替わりするのかな、、なんて通り過ぎていたら、それから半年もしないうちに、いつ通っても店のシャッターが下りていて。不謹慎なことながら、おじいさんに何かあったのかな、、、なんて、ほんの少しだけやきもきした。

またその八百屋さんが開いているのを見たのは2年前。たまたまの平日お休みにそこを通ったとき。おじいさんも健在で、ちょこっとほっとして自転車で通り過ぎ、、かけて、戻った。キャベツ100円、大根100円、レタス100円と書いた段ボール。そして、かごに盛られているキャベツも大根もレタスも、数は3。みっつ100円だとしたら、むちゃくちゃな値段設定。そして商品は、3種類のみ。商品棚なんてなく、野菜の箱からおじいさんがかごに野菜を盛り上げて地面に置いた板の上に並べている。

どれもしっかり張りがあり、ひとつ100円でもお買い得であるので。とりあえずはキャベツください、と100円を手渡す。はいよ、で。かごのキャベツが3つどさっと袋に入れられて。

まじか。

いや、そうかもな、とは思っていたけれど。それはないかも、とも思っていたのだ。ちょっとした衝撃で、大量のキャベツに誓う、全部食べきるからね、、と。

そして。次に開いているのを見たのは、3か月ほど経っていたと思う。今度こそ、おじいさん、、と思っていたのだけれども(ごめんなさい)、元気そうに野菜をかごに持っていた。その時の商品はほうれん草と小松菜。どちらもかごに山盛りで。ほうれん草ください、で5把100円であると確認。利益率、とかどうなってんのかな、この店。自転車の後ろかごにほうれん草をのせつつ、ほかのお客さんと話しているのに聞き耳をたてる。業者に卸した後に残ったものがあるときは、店を開けている、、とのこと。時間も曜日も決まってないよ、って。

なるほど、ここは奇跡の八百屋だ、わ。

今では、この近辺を移動するときは、必ずこの八百屋を確認する。シャッターが空いていれば、踏切を渡って、今日は何がある、、って見に行く。いつも買って帰れるわけではないけれど(間違いなく大荷物になるから、ね)、何をどんな単位でいくらで売っているのか、ってのがすでに、娯楽。そして、おじいさん。大丈夫、まだ野菜盛ってるのね、、って。

そして、昨日。商品はさつまいも、だけ。5キロ箱400円。自転車の後ろかごにどさんと積んで。さて、このさつまいも。どうしてくれようか、、と、うきうきしているわけで。

やっぱり、あの八百屋は、奇跡。