さみしい回遊魚

地方の片側1車線の国道というのは、歩いている人がいない。先日、滞在先でふわっと時間が空いたので、車で10分ほどのところにあるという直売所を目指してお散歩開始。回遊魚のごとく止まると死んじゃう、わけではないが、ぼーーっと過ごしたいときはお散歩に限る。そのうえ、お宝ゲットかも。

国道沿いにすすんで、途中右に降りたらすぐにあるよ、との情報とグーグ〇先生もチェックして、意気揚々と進んでいく。国道を歩き始めてすぐに違和感。そう、どういうわけか、人がいない。午前11時、右側を歩いていると車からの視線が痛い。歩道はかろうじて片側に一人分確保されてはいるけれど、自転車もいないのだからこれで充分なんだろう、たぶん。幹線道路ではあるので、車はかなり走っている。なのになんでか、人はいない。

左手が国道なら右手にはすぐ海があり、海と道路の間に家がうすく建っている。年季の入ったおうちが多い。きっと窓から釣り糸垂らせるくらいの距離感のおうち。玄関出たら2秒で国道。店といえば、釣り船屋さんくらい。この辺の方たちはどうやって買い物に行くのかしらん。。車がないと生活できない、、ってこういうことか、と全力すたすた。普段の散歩は全く気を抜いてぽてぽてきょろきょろふらふらできるんだけれど、ここでは車からの不審者発見ビームが厳しい。用事があるの、すぐ近くに。。。っというふりをして、全力すたすたで直売所を目指す。

灰色の雲と青い空がせめぎあっていて、雨が降りそうな、ひょっとしたら雪になりそうな天気。ここまでお散歩に向いていない環境はこれまでなかった。早々にまわれ右して帰るべしと本能は訴えたが、直売所に行ってみたい、という欲と二人連れ。どんよりと波打つ海をみながら歩く。前からバスがくる。狭いし人影はないけれど、国道だもの、バス路線なんだな、、と思っていたら、バスが止まった。誰もいないバス停で。狭めの国道に大きなバスは圧迫感がある。なんとなく歩道からひとんちの軒下に寄りつつ通り過ぎる、と。

バスの乗降口が、開いた。

周りをひそっと見回すが、やっぱりどうにも人はいない。ということは、この扉は私のために、開いたのか。。乗ったほうがいいのか。。神の思し召し??

天使と悪魔がおろおろと会議を始めたけれど、全力すたすた、スピードを変えずにそのまま進むと、バスはすっと走り去った。

ここはまさかの、バスに用がある人以外が歩くわけない道、疑惑。ということは、我かなりの不審者です、、、ね。。

それにしても。必死になって走って追いすがって、それでも無情に走り去るバスもあれば。ただ淡々と歩いている人のためにとまって待っちゃうバスもある。次のバス停で、時刻表を確認すると次のバスは40分後。地方のバスのダイヤはシビアだけれども、運行状況はあったかいらしい。

車で10分、歩くと45分(やや早歩き:当社比)。結局、歩いている人(立っている人にも)、一人も見かけず、直売所に到着。野菜って重いよね、、帰りはバスで帰るかな、って次のバスまで50分。待ち時間のほうがながいわ、、っておんなじ道をひたすら歩いて帰った。自転車こぐ人と1回すれ違っただけだった。