おかんなコビト

ちょっと買い物。路地を選んですたすた歩く。

アジサイが目につく。琵琶の木もある。ちょっとゆっくり、琵琶の実のサイズを目算。通り過ぎながら、そろそろ収穫かな、今日は琵琶買って帰るかな。すこしばかり雨がふってるけれど。人と行違うにはちょっと横によける必要があるような路地では、傘を差さなくても、濡れるというほどのこともなく。

軒下に洗濯物を干しているおうちもある。雨続きだし、外に干しておきたいよなあ、とできるだけ見ないようにして通り過ぎて、、あ、袖が。

干してある洗濯物の袖が丸まっている。あー、乾いたな、ってたたみはじめて気が付く奴やん…、地味にへこむミス。ちょっと立ち止まって、背のびすれば、洗濯物に手が届くんじゃない?ってコビトさんがささやく。

いや、しません。

全くの通りすがりの人が、よそ様の洗濯物さわる時点で、アウトでしょ。

ここまで、アウト事案ではなくても。

突然の雨の時。見上げたアパートにお布団が干してあると、コビトさんはささやく。ピンポンして、雨だよって教えてあげたら?

いや、しません。

全く知らない人の部屋を約束もなく訪ねるなんて、仕事でもやりたくないな。

傘を振り回してけんかを始める小さな兄弟、ベビーカーを押してるお母さんはおろおろしてる。ちょっと、止めてあげたら?よその人に声かけられると、子どもっておとなしくなるよね?何なら、ちょっと遊んでもいいよね?

いや、、しません。

子どもさんに下手に声かけるとね、お母さんが不安になっちゃうかもしれないし。遊ぶとかね、ほんとかえって迷惑でしょ。

前を歩くお姉さん。サイズシールが服にはりついているとき、コビトさんはささやく。シール取ってあげたら?声かけてあげないと、ね?

いや、、、しません。

全く知らない人に声をかけるというのは、かなりハードル高いよね。お姉さんも、きっと行った先でお知り合いに教えてもらうほうがいいかもよ。

コビトさんはかなりのおせっかいなおかん属性らしい。が、ささやく相手を間違えていると思う。令和の日本人、さらには根っからのコミュ障には無理なのよ…。

ちょっと前の時代の日本のおかんか、都市伝説的大阪のおばちゃんか。ひょっとしたら国を超えて、ちょっと昔のコメディーにでてくる陽気なアメリカンかも。

コビトさんの正体は不明。でも、ほんの少しは、あこがれている。