主人公なんて、人外

朝になると、起きて。一日がはじまり、夜でおしまい。

ご飯をたべて、歯を磨いて、顔も洗って。

家に住んで、モノに囲まれて、身だしなみにも気を付けて。

仕事をもって、お金を稼いで、稼いだ分で生活をまわして、やりたい人は家庭をもって。働けなくなっても、自分と自分の周りで何とかすべく。

他人に迷惑をかけないように、他人にはやさしくできるように、困っている人には手助けを、、、できないならば、見ないふりを。

おそらく、ふつうの現代の日本人のわたし、にかかる常識。

特に何かを成し遂げるでなく、何かをやらかすでなく、何かをのこすでなく、さらっといなくなる、ひと。

そうして、たぶん。世界の9割以上が、わたしとおんなじ役で、生きる。

けれども、やっぱり。

常識をまとわない人は、いる。

たとえば、なにかひとつをつかまえるためなら、そのほかのすべてに向けるべきエネルギーをすべて、そのなにかひとつにふりきれる人。

たとえば、他人の目線を感情を、自分の行動の言い訳にしない人。

たとえば、まったく迷いをみせない人。

とても迷惑で、とても面倒で、とても係りにくい。一緒に過ごすのは、想像だけでも、とってもたいへんな人。そうして、とっても、まぶしい、人。

世界を、人生を、物語を。救う、変える、作りだす人。主人公。

映画「RRR」を引きずって。

主人公たちは、どう考えても[人間枠]から外れていて。

さっきのけがはどうした、とか。なんで生きてんの、とか。武器って増殖するんだっけ、とか。その体勢でどうやって飛んだの、とか。ここに来るまでに何回死んだよ、とか。

命がけで全力で闘う姿は、むしろコミカルですらあるのだけれども。

突き抜けた二人には、ツッコミは不要!!と言い切れる。

そんな力強さが、主人公には、ある。いっそ壮麗な、力、を際立たせるために、ウソもホントウも利用してしまうのだから。

ただ、だから。

常識の中でゆるゆる暮らす私がいなくても、世界になんの影響もないけれど。

主人公には、なれないし、ならないし、なりたくない、ぞ。

生きるのは、一回でいいや。