ひとつだけの

空を見る。

見上げることもある。見渡すこともある。目に入ることもあるし、目を奪われることもある。

どんなときにもそこにある。

うつうつしているときも、うかうかしているときも、うきうきしているときも。そこに、ある。

どこの国でも、だれの上にも。

どんな区別も、どんな区分も受け付けず。

ここでないどこかを想うとき、息をするのがつらいとき、目に映るすべてが色を亡くしたときでさえ。

ひとつだけで、そこにある。

だとしても。

私に見えるのは、私にだけの。

隣に並んで見たとしても、そのちょこっとの、場所の、目線の、気持ちの、差で。おおきなひとつは、別のもの。

他の何とも共有できない、唯一で。

おおきく、おおきく、おおきくて。閉じ込めるように、包み込むように。

決して、動かずに。そして、決して、止まらずに。

ひとりぼっちの、ひとつだけ。

閉じ込めたくて、つかまえたくて、やきつけたくて。

ここにいるから、空を、見る。

遠くでひどく雨が降った