本読みの体力と東海林さだお讃。

東海林さだおさんの丸かじりシリーズを愛読している。どんなに本読み体力が落ちたときでも、これだけは傍らにあった。ひとつの丸かじりに三日かけたとしても、活字と離れたくないしがみついていたい、なんていうみっともない未練を満たしてくれていた。

本読み体力がどうしようもなく落ち込んで、ついでに生きている意味なんて憑りつかれたらダメな奴に追いかけているようなときに。丸かじりにかじりついて、日常を維持していた。丸かじりは、とっても些細で、本当にどうでもよくて、つまるところどうしようもなくて、とてつもなく必要な日常をテーマに描かれる。

丸かじりをひとつ読みきれるようになって、四コマ漫画をお試しし。丸かじりに安心したら、そろそろと他のエッセイに手をのばす。そしたらまた丸かじりを読んでみて、おずおずと短編をのぞきこみ、またまた丸かじりで一息ついたら、シリーズものに立ち尽くす。。。

体力増強運動が功を奏し、今はたぶん、丸かじりなら1冊を一気に読みことができる。とはいえ、一気読みはしないのだけれど。ちょうどいいサイズで、ちょっと落ち着く話が詰まっている。たとえば、どんな場所に赴くときにも、どんな場所から帰るときにも、これちょっと違う、、と距離を感じなくて済む。こんなのは他に知らない私には、ちょっとしたスポットでちびちび読むのが、正解。なのでかばんには必ず1冊丸かじり。さらには部屋のテーブルに、枕の横に、丸かじりなのである。

丸かじりは、本読み体力が赤ん坊レベルまで落ち込んだ私のライナスの毛布だった。毛布を手放すことは、たぶん一生できないけれど。なんとかに、今。上下二巻の本に手を出している。一気に読み切るほどの体力はない。これはもう、現実の歳のせい、なので仕方がないことなのだけれども。それにしても、上を読み終わって下も読み始めたのだから、たぶんかなりに、なんとかな今。

本読み体力のささやかで十分な、回復。