むかしのはなし(5:田植え)

つばめを、みた。

商店街の軒先に突っ込んで、ここじゃなかったか、、ってな感じで飛び去るつばめ。次の日は、ここにすっかな、、ってな感じで商店の壁のちょっとしたでっぱりに張り付いていた。そろそろと春が逝く。

GWは種もみまきのお手伝い。必ず1日はそうだった。祖父が父が、自分ちの米ともち米を作っていた。もち米は時期が少し違うのと量が少ないので、気がついたら終わっている。でも、米は、一家総出の大仕事。種もみは水につけておいて、苗床に土をひいてから種もみをまく。ぐるぐると父がハンドルをまわし、種もみがびっしりとまかれた苗床を運ぶ。簡単なビニールハウスの中にきちんと並べていく。全部でどれくらいあったのか、とりあえず朝からやって、ひるごはんには終わっていたから、それほどでもなかったのだろうけれども。がらがらまわるハンドルとうごく苗床、ささぁっと降る種もみ。ハンドルを回す仕事は祖父か父。加減が難しいとかなんとか、子どもには任せてもらえない。

この作業のころに、つばめがやってくる。納屋の中にいつも巣をつくっていたから、納屋の入り口の一番上のガラス戸の1枚を半分割って、つばめの出入り口にしていた。つばめが巣を作り始めるのを見つけると、そこの下に段ボールをおく。つばめがみんな旅立つまで、つばめのトイレとなる。今年の巣はヘビに襲われないといいね、去年は卵がおちてたね、、なんて話しながら、何処に段ボールをおくか、慎重に決める。

家からはだいたい200メートル、納屋の前のビニールハウス。毎日、苗床に水やりをするのも、祖父か父。みるみるのる苗はふかふかで、寝転がったら気持ちよさそうな、そんなやさしい緑に育つ。5月の終わりごろの週末に、田植え。朝からなんとなく家の中はバタバタしている。ちょっと早めの朝ごはんが終わると、祖父と父は早速に農機具がしまってある納屋に行く。田植え機にとっては、年に1度の晴れ舞台。がしかし、素直に働くには、ほったらかしにされすぎている。なんてったって年に1回しか使わないのだ、大体がどこかの調子が悪い(たぶん拗ねてる)。そんなわけで、実際に田植えが始まるのは、大体が昼前。オトナの機嫌を十分に損ねたころに、よっこらせと動き出す。田植えをする祖父と父、それを見守る祖母にお昼のお弁当を差し入れ、3時のおやつを持っていく。空いた苗箱を溝(農業用水が集落の中を通っている)で洗う。機械の田植えが終わると、こんどは隅を手植えする。裸足で田に入ると、ぬめんと足を泥が舐める。曲がってるの、浅すぎだの、深すぎだの言われながら、ぬめんぬめんと苗を植える。

土日で田植えはすっかり終わる。田植えが終わった田んぼは、田んぼになる。陽が落ちるころに、つばめがとびかう田んぼをながめる父の背中をさがして、晩ご飯だよ、と声をかける。父が子どものころには、田植えの時は学校が休みになって、、という話を聞きながら家に帰るまでが、田植えの記憶。

 

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